子どもの心を守るために、私がしていること

ピアノ教室では、音楽を教えることはもちろんですが、子どもたち一人ひとりの心の動きに寄り添うことも、同じくらい大切だと感じています。

レッスンの中で、子どもたちはふとした瞬間に学校のことや友だちのこと、家で感じていることなどを話してくれることがあります。
でも私は、どんな話もすぐに親御さんに伝えることはしていません。

子どもに「話してもいい?」と聞くこと

子どもが勇気を出して話してくれたことは、その子の大切な気持ち。
それを勝手に誰かに伝えてしまうと、心の中に「裏切られた」と感じる小さな傷ができてしまうかもしれません。

だから私は、親御さんに話した方が良いと判断したときは、
「お母さんに話した方がいいと思うの。話してもいい?」
と、必ず本人に確認するようにしています。

それが、自分の気持ちや出来事に責任を持つことにもつながるし、信頼関係にもつながっていくと感じているからです。

先日起こった、小さなハプニング

ある日のレッスンで、ひとりの生徒さんが、教室に置いてあったハードディスクをうっかり倒してしまいました。
ほんの少し欠けたものの、データの中身は無事。

私は中を確認して、
「大丈夫だったよ。データは壊れてなかったから安心してね。でも、倒してしまったことは謝ろうか。」
と伝えました。

「ごめんなさい」
と言うと、その子はホッとしたのか、ぽろぽろと涙をこぼし始めました。

「ごめんね。びっくりしたよね。ここに置いておいた先生も悪かったと思う。だからここに片付けておくね。ごめんね。」
そう伝えると、涙を拭きながらコクンと頷いてくれました。

「どう報告するか」も一緒に考える

落ち着いたころを見計らって、私はこう伝えました。

「このことはね、お母さんにお話しした方がいいと思うの。そうしたら、あなたの心も軽くなって、次のレッスンに来やすくなると思うの。」

「こういうことがありました。データは壊れていません。問題は解決しています。だから弁償とかそういうこともなくて安心してください。って伝えようと思うんだけど、あなたがいないところでLINEで伝えた方がいいか、今日の帰りにあなたがいるところで話した方がいいか、どっちの方が心が軽くなりそう?」

するとその子はしばらく考えて、「今日の帰り」と答えました。

安心して帰れるように

お迎えの時間、私は子どもが隣にいる状態で、お母さんに事の経緯をお伝えしました。

どんなふうに伝えるか、どんなトーンで話すか、子どもはしっかり見ています。

その様子を緊張した面持ちで見ていた生徒。
お母さんの反応も見て、少しずつ表情が緩んでいくのがわかりました。

「よし、これで大丈夫ね!また来週ね!」と笑顔で手を振ると、生徒も笑顔で振り返してくれて、おだやかにその日のレッスンを終えることができました。

大人の関わりが、心の土台を育てる

子どもたちは、失敗してしまったときこそ、大人の対応をよく見ています。

責めるのではなく、安心できる環境の中で「どうしたらいいか」を一緒に考えていくこと。
その積み重ねが、信頼関係を育て、自信にもつながっていくのだと思います。

そしてそれは、教室の中だけで完結することではありません。
自分の気持ちを伝えたり、誰かと向き合ったりする経験は、やがて教室の外——学校や家庭、友人関係など、さまざまな場面での対応力にもつながっていくと感じています。

私の教室が、そんな学びの土台になる場所であり続けられるように。
今日も子どもたちと一緒に、音楽と心の学びを重ねています。

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