私の教室では、カフェコンサートに生徒を出演させる機会を大切にしています。
長年ピアノを指導してきて、改めて強く感じることがあります。
それは、「審査員ではなく、お客様の前で演奏すること」の大切さ です。
「評価される演奏」になってしまう生徒たち
コンクールや試験を経験した生徒の多くが、気づかぬうちに「ジャッジされる前提で演奏する」ようになっています。
「間違えないように」「減点されないように」——そんな気持ちでピアノに向かうと、表現したい音楽ではなく、正確さだけを追求する演奏になってしまいます。
演奏を聴くのは、審査員ではなく、お客様。
けれども、そのことに気づかないまま、まるで審査員の前で弾いているように緊張し、楽しむ余裕もなく、ただ「間違えない」ことに意識を向けてしまう。
指導する立場として、この現実に哀しみを感じることがあります。
カフェコンサートで得られるもの
カフェコンサートは、審査のない温かい空間で、お客様に直接音楽を届ける場です。
ここでは、拍手もリアクションも、すべてがリアル。
「あなたの演奏が良かった」「心が動いた」と、直接言葉をもらえることがある。
この経験を積むと、生徒の意識が変わっていきます。
「誰かに楽しんでもらうために演奏する」
「音楽を通じて心を通わせる」
そんな気持ちが芽生え、演奏が変わってくるのです。
音楽とは「伝える」もの
ピアノを学ぶ中で、「正しく弾くこと」は大切です。
けれど、音楽の本質は「正しさ」ではなく、「伝えること」 にあります。
あなたの演奏を、誰かが楽しみにしている。
そのことを感じながら、ピアノに向かってほしい。
カフェコンサートを通して、生徒たちが「評価」ではなく「音楽の喜び」を知る場を、これからも大切にしていきたいと思います。
そして、シェアする
カフェコンサートは「演奏を届ける場」であると同時に、
お客様と音楽の時間を 一緒にシェアする場 でもあります。
演奏する私たちと、聴いてくださるお客様が同じ空間で、同じ音を聴き、感じる時間。
拍手や笑顔、時には涙で返してくださるその瞬間は、
音楽が「評価されるもの」ではなく「共に楽しむもの」へと変わる時間です。
音楽を通じて誰かとつながり、温かな時間を分かち合うこと。
それこそが、カフェコンサートを続けている一番の理由です。