それでも、コンクールを受ける意味があるとしたら
ここまで読んでくださって、
「結局、コンクールってどうなの?」
そんなふうに思っている方もいるかもしれない。
受けたほうがいいのか。
受けなくてもいいのか。
向いているのか、向いていないのか。
正直に言えば、この問いに、ひとつの正解はない。
コンクールは、音楽の価値を決める場所ではない。
それは、受ける側としても、指導する側としても、そして今、審査する側に立ってみて、はっきりと感じていることだ。
でも同時に、音楽との向き合い方が、これ以上なく浮き彫りになる場所でもある。
評価されることで、自信を持てる人もいる。
結果が出たことで、次へ進む力を得る人もいる。
一方で、点数や順位によって、自分の音楽を疑ってしまう人もいる。
どちらが良い、悪いではない。
ただ、コンクールは、人を映す。
私自身、受ける側として、悔しさも、喜びも、評価に振り回された時間も、すべて通ってきた。
そして今、審査員という立場で演奏を聴くようになって、ようやく、はっきりわかったことがある。
コンクールの結果は、才能の証明ではない。
ましてや、その人の未来を決めるものでもない。
それでも、コンクールを受ける意味があるとしたら。
それは、自分は何を大切にして音楽をしているのか。
その問いと、真正面から向き合う機会になることだと思う。
評価に寄せるのか。
自分の音を信じるのか。
そのあいだで、どう揺れるのか。
答えは、人それぞれでいい。
私は、コンクールで1位を取った翌日に、それまで積み上げてきたものを手放し、0から学び直す道を選んだ。
それは、結果が欲しくなくなったからではない。
結果よりも、自分の音楽のほうが大切だと、はっきりわかったからだ。
今、生徒さんや保護者の方から、こんな質問を受けることがある。
「コンクールを受けたほうがいいでしょうか。」
そのたびに、私はこう思っている。
受けてもいい。
受けなくてもいい。
ただひとつだけ、忘れないでいてほしいことがある。
音楽は、評価されるためだけに、続けるものではない。
コンクールで1位を取らなくても、誰かの心に残る音楽はある。
点数には表れなくても、「また聴きたい」と思わせる演奏は、確かに存在する。
コンクールは、人生を決める場所ではない。
でも、音楽とどう生きていくのかを、考えるきっかけにはなる。
その距離感を、自分なりに選び取れるようになったとき、コンクールは、もう怖い存在ではなくなる。
音楽は、順位よりも、ずっと長く、人生に寄り添ってくれる。
私は、そう信じている。
もし今、結果や評価の途中で、立ち止まっている人がいたら。
迷っていたり、比べてしまったり、「これでいいのかな」と思っている人がいたら。
この言葉を、そっと置いておきたい。
3歳からずっと音楽を続けてきて、今、はっきりと思う。
すべてが過程であり、
すべては、過程でしかなかった。
本当に、
すべてが。
